「2%にする消費税法」試し読み

「2%にする消費税法」試し読み

 

 
 
 ま え が き

 

子供の頃に、道で転んで、足をケガしたとき、子供が泣くと、お母さんが「痛いの痛いの飛んでいけ~!」と傷口を押さえてくれたら、子供は泣き止んで、痛みを感じなくなるのか、ケロッと元に戻ります。「おまじない」「魔法の言葉」があるのです。

  • ①消費税の「魔法の言葉」 

それは、「税の累積排除」と「税額控除」です。この言葉にふれると、魔法にかかり、誰でも抵抗できなくなります。

税法学者も税理士も課税当局も、電源がOFFになり、思考停止となり、固まってしまい、奥に入ることができない聖域だったのです。

  • ②魔法を解く「カギ」

魔法を解く「カギ」は、消費税の課税時期にあったのです。

国税通則法15条2項には、「物の引渡しの時に消費税は課税される」と定められています。買手が「消費税」を支払い、売手は「消費税」を預かるのです。

  • ③「税額控除」は犯罪行為

預かった消費税(売上税額)は公金であり、これから「仕入税額」を「税額控除」すれば、[返る税]となり「公金着服」として、犯罪行為になるのです。

給与の源泉所得税から何らかの理由をつけて、控除をすることは犯罪行為になり、そのことは容易に理解できます。

それと同様に犯罪行為になるのです。

  • ④現行消費税は廃止する

なんと、事業者への[返る税]は約8%分130兆円もあり、事業者が着服(事業者は儲けているのです)しています。納税額は約2%分30兆円しかないのです。

事業者は一銭も消費税を負担していないのです。

消費者のみが10%の消費税を負担しています。

あなたはこの現実に黙っておられますか?

  • ⑤改正案

筆者が提案する「2%の消費税」は、取引高税で「税額控除」はありません。

2%を消費者が支払ったら、事業者は2%を納税する単純明快なシステムです。

もちろん、インボイス制度は廃止です。

  • ⑥「令和の百姓一揆」を始めよう

現行消費税への信心は固く、改正へのハードルは高いので、国民運動から始めないと前進はありません。国民が税制改正の決定権を持っていますから、皆様の声を結集すれば、必ず改正は実現します。

今日から改正に向けてスタートを切りましょう。

 

2024年6月15日

 

世直シ作家・税理士 黒木 貞彦

                                                                                     

 
 目 次

 
 

 第 1 編

 

本書の発刊によって、現行消費税法は確実に廃止されます。

それは、第2編に述べるとおり、現行消費税法には、システムに欠陥があり、それが究明され、今回公表されるからです。

そこで、この第1編では、日本初の「消費税法改正案」を提案いたします。

①1章では、「改正案」

前半に、改正案「2%の消費税」を説明しています。全ての事業者は、2%の消費税を受取り、その2%をそのまま、納税するシステムです。税額控除は一切ありません

後半では、改正案の理論的背景を述べています。

買手が支払った10%の消費税のうち、実際の納税額は2%分しかありません。2%の税率で消費税の税収が確保できますから、改正案では税率を2%にしました。

8%分は事業者が[返る税]として、公金を着服しているのです。

消費税収から8%をカットし、事業者への[返る税]8%をカットして、できあがったのが「2%の消費税」の改正案です。

②2章では、「廃止する規定」

現行の消費税法から廃止する規定をピックアップしています。

全事業者が2%の消費税を納税しますから、免税事業者はいなくなります。その為に基準期間の定めが不要になります。

「税額控除」はしませんから、インボイス制度は全面廃止になります。簡易課税制度もなくします。

8%の経減税率も2%になりますから、全てが2%の単一課税になります。

③3章では、「改正のメリット」

事業者が着服している、5大[返る税]が全てなくなり、犯罪行為が解消されます。

小規模事業者もインボイス制度からの迫害から逃れることができて、課税事業者と対等に仕事ができるようになります。

消費者にとっては、消費税率が10%から2%に下がるメリットがあります。

ただ、事業者の方は「税額控除」がなくなるので、「仕入税額」分のコストが増えますから、その分の値上があります。そのため消費者としては実質的に4%の値下げになるでしょう。

インボイス廃止に伴い事業者の事務負担が激減します。

④4章では、「税制改正の主役」

税制改正は国民に決定権がありますから、あなたの力で税制が変えられることを述べています。

⑤5章では、「改正へのアクション」

先ず「2%の消費税」の改正案に賛同して頂ければ、改正への行動を起こしてください。

税制改正の国民運動として「令和の百姓一揆」を起こしましょう。

ラジオ。テレビ、新聞、マスコミを巻き込みますと、政治家も改正に動かざるを得ないでしょう。

次期衆議院選挙の争点として「2%の消費税」が取り上げられれば、最も早く「改正が実現」します。

                                               

 

 

 本文の要約

この要約は「経済レポート」に令和6年10月より12回分連載する原稿です。

本書に比べて図表がコンパクトになっております。正確な図表は本書を参照してください。

経済レポートの連載原稿
1章「改正案」と理論的背景
1 回 誰でも解る単純・明快な「改正後の内容」
2 回 税率は2%(実際の納税額)に下げる
3 回 全ての買手が2%の消費税を負担する
4 回 売手は2%の消費税をそのまま納税する
5 回 納税額は「売上高」だけで計算できる
6 回 事業者は改正後に売値を算定し直すこと
7 回 輸出取引は非課税扱いに改正する
8 回 課税者は国に一本化してはどうか
9 回 消費税の8割は事業者が着服
10 回 事業者の着服を除くことが狙い目
11 回 「取引高税」に改正する時が来た
12 回 納税額が2割(2%)しかない

 

 

 

1回 誰でも解る単純・明快な「改正後の内容」

  いよいよ今回から「2%にする消費税法改正案」の解説をはじめます。早く全体を知りたい方は左上の書籍を入手してください。経済レポート表紙のQRコードから申込まれますと、千円でお届けします。

どのようにまとめれば、読者の皆様にご理解頂けるか、悩みながら42回も目次を見返しました。最後になって、一章をやり直しました。「改正案」をいきなり頭に出すこと にして、「いきなり、本論」に入ります。

①買手は2%の消費税を払う

買手は商品の引き渡しを受けた時、あるいはサービスの提供を完了した時に、消費税の課税が行われます(コラム7)。

この点が重要なポイントです。国税通則法第15条2項では、「納税義務は、次の各号に掲げる国税については、当該各号に定める時に成立する」とされ、七号に「消費税等、課税資産の譲渡若しくは特定課税仕入れをした時、又は課税物件の製造場からの移出若しくは保税地域からの引取の時」とされています。

買手は商品の引渡を受けた時に納税義務が成立するので、2%の消費税を売手に預けるのです。

②売手は預かった消費税を納税する

売手は預かった消費税をそのまま国に納税するシステムです。

もちろん、預かった消費税をその都度納税するものではありません。売手の事業者の事業年度に従って、申告し納税します。

要は、現行の消費税のように「税額控除」をして、減額した残高を納税するものでないことをご理解ください。

この「税額控除」は、預かった消費税は、国の財産なのですが、その国の財産を減額することは、他人の財産の着服と考えられます。

税の累積排除とウソぶいて、累積しないものまで税額控除をさせて[返る税]を多額に生じさせています。詳細は7章を参照下さい。

2%を受け取って2%を納税することが正解なのです。

③素晴らしい消費税が誕生する

「税額控除はなし」「インボイスは廃止」「免税事業者もなし」「簡易課税制度もなし」になり、スッキリします。

2回 税率は2%(実際の納税額)に下げる

①現行の消費税の標準税率

2019(令和元)年10月1日以降の標準税率は次のとおりです。

消費税率7・8%+地方消費税率2・2%=合計10・0%

8項で課税権者を国に一本化する提案をしています。

この標準税率を2%に引き下げますから、国と地方に分けなくて、一本化した方が良いと考えます。

国から地方へ地方交付税で渡せば済むことで、納税者が区分する必要性はありません。税制は簡素にするべきです。

 

②めんどうな軽減税率

2019年(令和元)年10月1日以降の軽減税率は次のとおりです。

消費税率6・24%+地方消費税率1・76%=合計8・0%

この軽減税率の対象品目は次のアとイです。

ア、飲食料品(酒類、外食を除く)

イ、週2回以上発行される新聞(定期購読契約にもとづくもの)

以上のように酒類と外食は10%の課税になります。軽減税率については、19項も参照して下さい。この軽減税率も2%に引き下げます。

2%で税収が確保できるか

現行の消費税は「売上税額」から「仕入税額」を「税額控除」して「納税額」を計算する仕組みになっています。

事業者が販売した時に受取る「売上税額」は消費税の10%です。実は、この10%のうち、8割分(8%分)は事業者が「仕入税額」として「税額控除」を受けた[返る税]なのです。その結果、残りの2割分(2%分)のみが、消費税の納税額になっているのです(10)。

日本全体の金額ベースに置き換えますと、課税売上高1,600兆円×10%=税収160兆円になります。このうち、8%分130兆円を事業者が着服し、2%分30兆円が納税されています。

このように、課税売上高の2%しか納税されていませんから、2%の税率で、税収は確保できるのです(12・13・14)。

この数字は筆者が、令和6年の「消費税収約30兆円」のみをベースとして、電卓一つではじき出した数字です。ダイナミックな推定の基に算定しました(61)。

 

3回 全ての買手が2%の消費税を負担する

現行の消費税は最終消費者が負担するものとして設計されています。

最終消費者とは購入したものを転売しないで消費する人のことです。

そうしますと、一般の消費者と事業者としての消費者が含まれることになります。

事業者の場合も、いろいろな経費の支払いは転売することはできず、最終消費者としての支払いになります。

また、設備投資の支払いも、最終消費者としての支払いです。

①現行の消費税は消費者のみが負担

私ども消費者は買い物をすると、売手から当然のように10%の消費税を請求され、購入代金と共に支払いをしています。

実は10%の消費税を負担しているのは消費者だけなのです。

②事業者は消費税を負担していない

事業者は「税額控除」をするために、実質的に消費税を負担していないのです。

例えば事業者がボールペン1,000円を文房具屋で買うと、100円の消費税と共に1,100円を支払います。インボイスの領収証を持ち帰ります。この光景を見ると事業者は100円を負担したように見えます。

ところが、消費税の申告に当たっては、その事業者の売上の消費税(売上税額)から、仕入の消費税(仕入税額)を差し引いて、その差額だけを納税しているのです。

「仕入税額」には仕入だけでなく、経費・設備投資の消費税も含まれており、このボールペンの100円も入っています。

「売り上税額」はお客様(消費者)から預かった消費税ですから、本来は預かった全額を納税すべきです。

ところが、「売上税額」からボールペンの100円を「差し引く」ことは、100円が事業者に戻ってくることなのです。

結果として、ボールペンの消費税は負担していないのです。

③全ての買手が消費税を払うべき

事業者が負担しない、こんな不公平な税制は許されません。

「2%の消費税」では、すべての買手が2%の消費税を負担するようにします。

「税額控除」をなくして、事業者も2%の消費税を負担するのです。

4回 売手は2%の消費税をそのまま納税する

①売手は、2%しか納税していない

この点は12項で検討しています。

12項は、上半分で売上高と仕入高の消費税の納税額を計算しています。

4事業者の「売上税額」の合計は24,000円。「仕入税額」の合計は14,000円でその差額は10,000円となり、これが消費者が支払った消費税10,000円と一致し、あたかも正しいと自慢しています。

ここまでは「仕入税額」の控除をする正当性があるのですが、問題はこの続きがあって、破綻するのです。

つまり、商品の仕入だけを差し引いた計算の途中なのです。

各事業者は、経費や設備投資の消費税も「仕入税額」として控除します。

筆者が、その消費税額を計算しますと、5,200円になり、10,000円から差し引くと納税額は4,800円になるのです。

要は、仕入・経費・設備投資の税額控除をして、結果として2%程度しか納税をしていないのです。

すると、10%の消費税から、2%分しか納税されなければ、残りの8%分は事業者が着服することになるのです。

②[益税]どころか[返る税]がある

免税事業者が10%の消費税を受取っても納税が免除されているため、受け取った消費税分が、これまでは[益税]になると 言われています。

免税事業者は、実際は材料費、燃料費、仕入れ、経費にかかる消費税を負担していますから、まるまる10%をトクしているわけではありません。

この[益税]は売上高が1,000万円以下の事業者のものですから、みなし仕入率を

60%とすると、約2兆円の税収減と見込まれます。

世間では免税事業者の[益税]を問題視していますが、それどころかケタ違いの金額で、事業者が着服する[返る税]が130兆円も税収減になっています(7章)。

[益税]という穏やかな表現では、だれも振りむいてもらえませんから、[返る税]と呼んで、注目してもらいたいのです。

2%を受け取ったらそのまま納税する

買手から預かった国の税金(公金)はそのまま納税しないと犯罪行為になります。

 

5回 納税額は「売上高」だけで計算できる

①現行の「課税売上高」を採用

課税標準とは、税額計算の基礎となる金額のことをいいます。

この合計額(課税標準額)に税率をかけて、消費税額を算出します。

「課税売上げに係る消費税額(売上税額)を算出します。」が、「2%の消費税」では税額控除をしませんから、この「売上税額」が消費税の納税額になります。

国内取引と輸入取引

国内取引は次の4つの条件をすべて満たす取引とされています。

ア、国内で行うものであること

イ、事業者が事業として行うものであること

ウ、対価を得て行うものであること

エ、資産の譲渡、資産の貸付又はサービスの提供であること

国内取引の「課税資産の譲渡の対価の額」とは、対価として収受する又は収受すべき一切の金銭及び金銭以外の物、若しくは権利その他経済的利益の額をいいます。一般的には、当事者間で授受する対価の額が課税標準になります。

輸入取引は保税地から外国貨物を引取ることで、消費税の課税対象になります。

課税標準は上の表のとおりです。

③売上高のみで消費税が計算できる

以上のように難しく書きましたが、日常の売上高を決算時に集計したものです。

決算書の売上高の数字です。

これだけで2%の消費税は計算ができます。

年間の売上高×2%ですから、誰でも計算ができます。

単純で明快な計算システムです。

徐々に明らかにしますが、現行の消費税のしくみは、お客様から受け取った消費税10%の「売上税額」から、事業者が支払った消費税「仕入税額」を差し引いて、納税額を計算するしくみになっています。

驚くべきことですが、「仕入税額」が約8%分あって、納税額は約2%分しかないのです。

そこで、受取る消費税率を10%から8%分引き下げ、「仕入税額」の控除約8%分をなくすれば、2%の消費税になり、インボイスなどの複雑な計算は不要となるのです。

6回 事業者は改正後に売値を算定し直すこと

これまでは仕入、経費、設備にかかった「仕入税額」は、「売上税額」から税務控除ができたので、「仕入税額」は事業者の負担にはなりませんでした。

①購入先に支払った消費税がコスト増になる

「2%の消費税」に改正しますと、「仕入税額」は控除しません。

これまで通りの販売価格で商いを続けるとどうなるでしょうか?

1カ月分の売上高(本体価格)を100万円とします。

2%の消費税を買手から2万円受取り、そのまま2万円を納税します。

すると仕入、経費、設備の合計を60万円としますと、これに2%の消費税がかかっていますから12,000円ほどコストが増加します。この12,000円分は事業者の利益を減少させてしまいます。

②販売価格の改定が必要

上の図は企業の利益をこれまで通り確保するための図表です。

仕入、経費、設備の下に「上記の消費税2%分がコストに算入される」と表示しています。先の 

12,000円について販売価格をアップさせれば、企業の利益はこれまで通り計上ができます。

③どれだけアップするか

業種によって大きく異なります。

簡易課税制度の「みなし仕入れ率」(67)を参考にしますと、次のようになります。

 卸売業 100万円×0.9×0.02÷100万円=1.8%

 小売業 100万円×0・9×0.02÷100万円=1.6%

 製造業 100万円×0.7×0.02÷100万円=1.4%

 飲食業 100万円×0.6×0.02÷100万円=1.2%

各事業者で実際の仕入率を計算して、販売価格の見直しをして下さい。  

右に計算した〇%は、売上高にかけて、コスト増加分の概算額を計算するものです。

飲食業の場合はみなし仕入率が60%ですから、1カ月分100万円の売上高に、1.2%をかけて、12,000円となる計算です。

 経営者は、2%に改正されたら、商品の売値を計算し直す必要があるのです。

7回 輸出取引は非課税扱いに改正する

本書の輸入取引に関しては次の掲載があります。7項、23項、30項、63項、本項では非課税扱いとすることを述べています。 

①現行の消費税の取扱い

現行の消費税では輸出売上は輸出免税(コラム6)として、消費税を0%として課税しています。  

これは、非課税ではありませんから、「税額控除」が可能となり、還付金[返る税]が6.6兆円生じています。

実は輸出業者の「仕入税額」を計算するデータがありませんでした。

輸出業者では、輸出売上ばかりでなく国内売上があるはずですが、63項に示すとおり、企業によって「輸出割合」はまちまちです。

 筆者としては輸出売上の10%と何の根拠もない仮定をして順次逆算をしました。その結果、「輸出割合」は74・31%になりました。

筆者として「仕入税額」の計算を10%と仮定しましたのは、還付金の総額がネットを調べると6兆6,000億とあり、この金額をベースとすると、計算不能となったため、10%の仮定にせざるを得なかったのです。

還付金の総額がもっと巨額であると考えられますが、残念ながら公表された数字がありませんでした。

②輸出取引は非課税扱いとする

 「2%の消費税」に改正しますと、「税額控除」をする考えはありませんから、輸出取引は非課税扱いとなります。

そのため、「税額控除」がないので[返る税]は完全になくなります。

[返る税]は何の根拠もない還付金ですから、なくなって当然なのです。

③どれだけ増税になるのでしょうか

先ず国内売上分は5%(仮定)の値上げ分を含めて、2%の消費税で7,326億円の増税になります。

もう一つ輸出取引は5%(仮定)の値上げ分を含めて、売上高は105兆9,309億円が非課税扱いとなります。

この製造業としてみなし仕入れ率を70%としますと、74兆1,516億円の2%の消費税1兆4,830億円が「仕入税額」相当分になりますが、これは増税になるのでしょうか?検討中です。

8回 課税者は国に一本化してはどうか

国と地方と両者が課税権者となり申告書にも区分して記載するようになっています。

消費税と地方消費税を合わせて10%や8%が定められています。

消費者や事業者からみると、合計の税率を越えなければ問題がないわけですから、国と地方がいくら財政収入を配分するかには関心がありません。

どうせ不足する場合は、財務省と総務省がやりとりするはずですから、適当に配分すれば良いと考えます。

①税率区分がわずらわしい

現行の10%の標準税率の場合、国税の消費税率が7.8%、地方消費税率2.2%に区分されています。

8%の軽減税率の場合、国税の消費税率が、6.24%、地方消費税率が、1.76%に区分されています。

このように10%の標準税率と8%の軽減税率の複数税率となって、スーパーマーケットや食料品販売業者、ギフトショップなどは現場の事務が大混乱しています。

これらの事業者に聞くと、もう「いい加減にしてほしい」との声が聞かれます。

このように、国と地方で単に税率を区分しているだけで、消費者や事業者としては、いずれにしても納税するものですから、その区分は関係がありません。

財政収入の配分の問題ですから、国が全額収入し、地方交付税で調整を図れば済む話です。

一般国民も巻き込むような話ではなく、国と地方とのやり取りで済ませるべき問題です。

②国からの交付税がある

国と地方との財政支出の区分も適切なのかどうか、国民には判断できませんから、いわんや財政収入がいくらなら妥当なのかの判断もできるわけがありません。

この度「2%の消費税」に改正されると、2%を国と地方に配分するとなると単位が小さすぎます。

③国に一本化すべき

国に課税権者を一本化し、地方消費税は廃止し、事務の簡素化、合理化を図るべきです。

官公庁のやる仕事も多方面に分散するのではなく、事務の縮小を図り、統合を図り、経費節減に努めるべきです。

9回 消費税の8割は事業者が着服

ここでは、現行消費税の実態を推計の金額と共にお伝えします。

上の図表の上の半円形は「本来の税収」を示しています。この数字は61項に掲載しているものを用いています。令和6年税収予算の約30兆円から、筆者が「日本全体の課税売上高」を推定計算したものです。これによりますと、1,597兆円となり消費税率10%ですから、税収は約160兆円になるのです。

①[返る税]とは何か

事業者が消費税の納税額を計算する方法は「売上税額」から「仕入税

額」を控除することになっています。

この「仕入税額」を控除する理由は「税の累積を排除するため」と説明されていますが、税の累積は売上原価だけであり、経費や設備投資の消費税は累積しないのです(47)。

「税の累積」は、別に「悪いこと」ではありません。例えば、たばこ税や酒税に、さらに消費税が課税されていますし、一台の自動車に、たくさんの税金が課税されていますし、一つの土地と建物に固定資産税と都市計画税が課税されています。納税者が許容すれば、排除する必要はないのです。

 しかし、「仕入税額」を控除していますが、その結果、この控除額は「約160兆円ー納税額約30兆円=130兆円」にも達するのです。これを[益税]とするにはあまりに巨額ですから、筆者はこれを[返る税]と命名しました。

いずれにしてもこの130兆円を事業者が「着服」しているのです。

②筆者としては「公金着服」と呼びます。

この[返る税]は、消費者から預かった税金(公金)から、勝手な理由をつけて、売手が税額控除をすることですが、こんなことは許されません。筆者は「公金着服」と呼びます。

源泉徴収税額の預かり金から適当な控除が許されないと同様に、この控除は違法性があると考えます。

③納税額は税収の20%約30兆円

上の図表に示すとおり、納税額は約30兆円しかありません。これだけで、消費税は破綻していると思われませんか。

この詳細は後述しております。

10回 事業者の着服を除くことが狙い目

①[返る税]を除くことが狙い目

本書は、「2%の消費税」にする改正案を提案しております。この改正案の狙い目は前項で述べた事業者が「着服」している[返る税]を除くことなのです。

消費者のみが10%の消費税を負担し、事業者は消費税を負担せず130兆円もの[返る税]を着服しています。

税収の80%にものぼります。

税率を「2%」に下げず、現行の「10%」のままで[返る税]をなしにすれば、130兆円の税収増になり、財政健全化になります。

これも選択肢の一つになりますが、それは余談として置いて、本書の「2%の消費税」への改正を目指します。

②現行消費税のイメージ

前回の図をもう少し単純にしますと、次のようになります。

事業者の立場から見ますと、商品の販売によって10%の消費税「売上税額」を預ります。

その「売上税額」から、事業者が支払った消費税「仕入税額」を8%分差し引きます。これを[返る税]と呼んでいます。  

「売上税額」10%から「仕入税額」8%分を差し引いて2%分を納税します。これが現行消費税のイメージです。

消費者は10%の消費税を支払います。

事業者も、購入時には10%の消費税を支払いますが、申告に当たり、「仕入税額」の控除を受けて、消費税を負担しないで、8%分の[返る税]を着服するのです。

その結果[納める税]は約2%分しかありません。

この現行の消費税は「付加価値税」と呼ばれています。

③「2%の消費税」のイメージ

上の表の点線部分を取除く「改正案」の提案です。

それは「受取税」を8%カットし、[返る税]を全面廃止して8%カットするものです。

残るのは右側だけになり、税率が2%に下がり、[受取税]が2%で、それをそのまんま(税額控除をしないで)2%を[納める税]とするだけなのです。

この改正の消費税は「取引高税」と呼ばれるシステムです。

次項に説明します。

11回 「取引高税」に改正する時が来た

①一般消費税は2種類ある

上の図表に「多段階一般消費税」の区分を載せています。

「多段階」とは流通経路の全ての段階の事業者という意味です。「一般消費税」とは広く全ての関係者に課税するものです。

実はこれには2種類あって、下の「付加価値税」が現行の消費税です。つまり、消費税の累積を排除する為に、「前段階税額控除」を行うものです。

もう一つ「取引高税」と言う仕組みがあります。

これは、消費税の累積を納税者が許容するもので、「前段階税額控除」を行わない方式です。

②「付加価値税」は失敗に終わった

本書の第2編の「現行の消費税法は廃止する」に詳述しておりますが、

現行の「付加価値税」は完全に破綻しております。

6章に「破綻の原因」を7章に「事業者に多額の[返る税]が生じている」を述べております。

「破綻の原因」は「税の累積排除」です。これは前回も述べたとおり、税が累積することを納税者が許容すれば、排除する必要は全くありません。

「税の累積排除」をするため、累積しない経費や設備投資も、誤って含めてしまい「税額控除」をしています。

ところが、この「税額控除」は、預った消費税「売上税額」が「公金」なのですが、この公金から控除をしており、犯罪行為になるのです。

控除した税額は「公金着服」の[返る税]で納税額の4倍、130兆円もあるのです。

③「取引高税」に改正する

「付加価値税」を、「弟」としますと、「兄」の「取引高税」に改正するものです。

各事業者は、買手が支払った消費税をそのまま納税します。前段階の税額控除はしない方式です。仕入(売上原価)、経費、設備投資にかかる「仕入税額」は全く控除しないものです。これによって、インボイス制度も当然不要となり、事業者の事務負担はゼロになります。

これまでの「仕入税額」分はコストとして増加することになりますから、事業者は「仕入税額」分を売値に加算する必要があります(6)。

売値を値上げしなければ、コストが増えて、利益の減少となります。

12回 納税額が2割(2%)しかない

①事業者は消費税を負担していない

上の図表の売上は国税庁ホームページの「消費税のあらまし」1ページに掲載されているものです。

事業者は「売上税額」―「仕入税額」を納税しますから、結果として消費税を負担していないのです。

この負担していない「仕入税額」分は[返る税]となって事業者が着服しています(62)。

②納税額の計算

上の図表は紙面の都合で圧縮しています。著書では、各事業者の仕入分の「仕入税額」を「売上税額」から差し引いた消費税を表示しています。

その消費税額はそれぞれ、生産業者A2,000円、メーカーB3,000円、卸業者C2,000円、小売業者D3,000円となります。

このA、B、C、Dは売上から売上原価を差し引いた消費税額です。この合計10,000円は消費者が支払った消費税額10,000円と一致します。自慢げに前記ホームページで強調されています。

しかし、この続きがあるのです。

仕入以外にも、経費・設備の消費税を正当な理由もなく、「税額控除」をしているのです。

上の表では、仕入分(売上原価)+経費+設備投資の「仕入税額」の合計額を、「みなし仕入率」を使って計算しています。

各事業者の「みなし税率」は次のとおりです。生産業者は70%、メーカーは70%、卸売業者は90%、小売業者は80%です。

売上高にこの率をかけた金額の10%が図表の「控除額」=「仕入税額」の数字です。⑤、⑥、⑦、⑧の「控除額」の合計は19,200円になります。

消費税は、売上24,000円―仕入税額19,200円=4,800円の納税額合計になります。

この商いの総売上高は240,000円ですから、税率は2%になるのです。

納税額は2%程度

問題があるとすれば、簡易課税制度による「みなし仕入率」を採用している点です(67)。

筆者も、数字が合うので驚きました。

実質の納税額は2%程度なのです。








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